私は、資格を取ってから、10年間リハビリの仕事をしており、病院や施設で、入所・通所・訪問でのリハビリを経験してきています。私自身は本当にやりがいのある仕事だと思っており、なったことに対して後悔はありません。
しかし、今後の事を考えると不安な部分は多いです。
何に対して不安なのか?
これからどのような働き方をしていけば生き残っていけるのか?
これらをお伝えしていきたいと思います。
もし、今から理学療法士の資格を取ろうか迷っている方がいたら、まずこの記事を読んでから考えることをオススメします。
また、この記事では理学療法士のことを書いていますが、考え方や流れは作業療法士や言語聴覚士も一緒なので、そちらを目指しているかたにも参考になると思いますので、是非最後まで読んでください!
この記事でわかること
この記事を読めば、これから資格を取ろうと思っている人や、迷っている人に対して、理学療法士の現状と将来性がわかります。
どういうところに就職して、どれくらいの給料を貰えるかなどの視点から、わかりやすく解説しています。
最後には、今後の流れから、考えられる将来性なども説明しますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
理学療法士の学校数・人数
理学療法士の資格を取る人は、資格が出来てから徐々に増え、平成15年くらいから急増、平成27年くらいからは平行線となっています。
なので、理学療法士の総数は、今でもどんどん増え続けています。
【理学療法士資格取得者数累計】
○平成元年:8,967人
○平成15年:37,044人
○平成31年度:172,285人
(参考:日本理学療法士協会HPより)
これは資格を取った人の累計のため、仕事を辞めている人もいるでしょうから、17万人が理学療法士として働いているわけではありませんが、この数の増え幅はすごいですよね!
理学療法士は現在飽和状態にある?
理学療法士の数が、ここ数年で一気に増えたことはお伝えしました。でも施設も増えています。需要と供給の関係はどうなっているのでしょうか。
結論から言うと、「飽和しつつある」という状態です。
病院は数があまり増えていないため、倍率も高くなってきています。施設はたくさん出来ており、今までリハビリ職がいなかったデイサービスや特養などにも、リハビリ職を配置することが増えてきています。今後も老人が増えていくため、まだ雇えていない施設はたくさんあるため、まだまだ飽和しているわけではありません。
しかし、今から理学療法士になろうと思っている方が気をつけなければいけないのは、今のことより、10年後・20年後だとおもっています。
2025年に団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題は聞いたことがあると思います。この時期が一番高齢者が多くなると予測されているため、数年間はリハビリの資格を持った人は活躍の場を広げていくと思います。
しかし、2040年くらいから、徐々に老人の数も減ってくることが予想されています。そうなってしまうとリハビリ対象者が少なくなるため、リハビリ職員も飽和してきます。
そうなったときの対応も考えておかないと、
「せっかく国家資格を取ったのに、働き先がなくなる」という悲しい出来事が起こってしまう可能性があるのです。
今の働き先と今後の流れ
次に、理学療法士の資格を取ったら、どんなところで働けるのかを見ていきましょう。
ここでは、初めに知っておくべきことがあります。
「リハビリ」というのは、医師の指示をうけないと動くことが出来ない仕事になっています。ですので、接骨院のように、資格をとって自分で店を構えて事業を起こすということが出来ません。
医師の指示書を持ってくればリハビリが出来るような店舗を作ることができるようになるという話は十年以上前から言われていますが、未だに出来ていないため、今後もどうなるかわかりません。
なので、将来的に自分で店を持ちたいと思う方であれば、柔道整復師や鍼灸師の資格を取ったほうがいいと言えます。
資格を取得して、最初の働き先は?
理学療法士の場合、資格を取得して最初の働き先は以下の通りです。
・医療施設:約66%がココ!
・介護福祉施設:不明
・訪問看護ステーション:不明
・就職はせず、大学院などに行く人もいる
理学療法士協会によれば、始めての就業場所に医療施設を選択する方が圧倒的に多く、約66%いるそうです。
介護施設や訪問看護ステーションの需要も増えており、以前は経験者が中心でしたが、今では新卒での募集も増えています。もちろん就職はせず、大学院に行く人もいます。
これらの内訳は不明ですが、この4パターン以外は特殊な道だと思います。
その後の働き先は?
基本的には病院・施設・訪問看護ステーションで働いている人が多いです。
その他にも技術を身につけることで、少し幅は広がります。
①マッサージ関係
②ジム関係
③技術を教える講演者
④訪問看護ステーションの立ち上げ
⑤教員
⑥スポーツ選手などの専属トレーナー
⑦アドバイザー
(福祉用具や健康器具など)
⑧その他
①、②は最近になって理学療法士の就職先としてあるようです。1年目からも就職できるかもしれませんが、以前にはなかった就職先です。最近は「理学療法士が行う」ということで説得力があり、集客が見込めるということで、募集しているところもあるそうです。
③は、講演だけで副業としてやっている方もいると思いますが、自分で講演をする事業を立ち上げて、技術を教えることで稼いでいる方もいらっしゃいます。この業界はまだ若いため、これからこのような事業は増えていくかもしれませんね。
④も自分で事業をするというものです。理学療法士の資格だけでは店を構えることは出来ませんが、看護師を雇って訪問看護ステーションなら立ち上げが可能です。病院や施設を作るとなれば大きな資金力が必要ですが、訪問看護ステーションであれば、少ない資金でも作ることが可能なため、チャレンジする方がいます。
⑤理学療法士の学校の教員になる方もいます。理学療法士になる人数が多くなっており、教員の平均年齢も高くないため、入れ替えがあまりなく、かなり狭き門となっています。
⑥、⑦は主に大学院に入って、各分野の専門のエキスパートになる事が必須です。これらも、色々な経験を重ねて、ある程度有名になってからでないとなれないとなれないです。
⑧現在は色々な分野で理学療法士での活動を広げています。今後、上記以外にも、理学療法士の専門の知識を与える場は増えていくと思います。
理学療法士の給料はどれくらい?
ここでも最初に抑えておくべきことがあります。
医療保険や介護保険下での仕事になり、1人が一日にリハビリ出来る人数というのが決まっているということです。ですので、1人がリハビリで得ることができる報酬の上限値が決まっています。
もちろん、管理職についたり、会社に貢献することでさらに給料が上る可能性はありますが、それでも病院や施設全体として得られるお金は決まっています。理学療法士として普通に働いている限り、一流大手企業やベンチャー企業のように「年収1000万円」というような給料を目指すことは不可能に近いのです。
2017年度の理学療法士・作業療法士の平均年収は以下の通りです。
決して高くありませんよね。
比較するために、一般的な年収平均も調べてみました。
年代 | 男性平均年収 | 女性平均年収 |
20代 | 371万円 | 321万円 |
30代 | 484万円 | 377万円 |
40代 | 573万円 | 403万円 |
50代以上 | 661万円 | 431万円 |
引用元:doda(2019年9月~2020年8月の1年間にdodaエージェントサービスに登録した人の平均年収データ)
比較対象が2017年と2020年のものなので、多少の違いはあるかと思いますが、この2つを比較をすると、以下の事が見えてきます。
・男性の年収は平均全体的に低め
・特に40-50代ではより差が広がる
・女性の年収は全体を通して平均より少し高め
平均年収であるため、全体平均の方が格差は大きく、実際平均に満たない人の方が圧倒的に多いはずです。この表で見えるものが全てではありませんが、この事実は知っておいて損はないと思います。
また、理学療法士の中でも、職場によっての傾向もあります。
訪問リハビリ > 施設 > 病院
この順に給料は良くなるという傾向があります。
理由としては、
- 訪問リハビリが一番もらえる報酬が大きいから
- 施設では少ない人数で多くの利用者を見る必要があるから
といった理由が大きいと思います。
ただ、最初の就職先に訪問看護ステーションを選ぶのはオススメしません。なぜなら、訪問リハビリは基本一人での行動になるからです。まずは先輩や仲間のいるところで、自分のスキルを身に着けてから、訪問リハビリに行く事をオススメします。
これに関しては、採用する側も悪い部分はあると思います。リハビリ職は、経験が何年あろうと、リハビリに対する報酬は変わりません。
「1年目でもいいから、とにかく訪問してもらえればお金になる」という、大人の汚い発想を持つ企業があるため、注意が必要です。
仕事はどのくらい大変?
仕事内容
通常の業務としては、1日18単位としているところが多いようです。
1単位が20分なので、6時間のリハビリを行い、残りの時間は記録などの事務作業をするという流れになるでしょうか。
リハビリよりも日々の記録や報告書など、事務作業も結構あります。職場によって、どの程度の報告書を作るかは変わってきたり、病院・施設によっても変わりますが、私は事務作業の方がすごく大変に感じることが多いです。
休みについて
これも職場によって大きく異なりますが、病院や施設の場合は次のパターンが多いです。
①日曜が休みのパターン
もう1日の曜日固定休、またはシフト制
②日曜が休みでないパターン
週2休の固定休または、完全シフト制
最近は365日のリハビリ病院が多いため、日曜日が休みではないところも増えてきています。また、祝日は関係ないところが多いため、1年を通して考えると、一般企業に比べて休みは少ないケースが多いです。
個人的な仕事に対する考え
理学療法士の仕事をしていると、
「人と関わる仕事だから大変ですねー」
と言っていただくことが多いです。
しかし、この仕事が大変だと思ったことはありません。
たくさんの人と関わるため、合わない人もいますし、認知症の人と関わるとイライラすることもあります。でもそれって普通の会社員をしていたとしても同じだと思います。
むしろ、面と向かって「ありがとう」と言ってもらえて、これ程までに貢献感を直に味わうことができる仕事は他にはないと思っています。
まとめ
「理学療法士」という仕事はすごくやりがいのある仕事だと思っています。
しかし、せっかく高い学費を払って国家試験を取っても、給料面は期待出来ず、将来性についてはあるとは言えません。なので、「安定するから」という理由でこの資格を取ろうとしている人は考え直したほうがいいと思います。
今後、今以上に活躍の場が増えてくるとは思いますが、「お金」や「将来性」の事を考えると、明るくはありません。大学院まで行って研究者になったり、理学療法士を教える立場になれるようになれれば、給料面でも安定するでしょうけど。
今は、コロナで色々な事が変わりつつあるため、一般の企業に就職しても潰れてしまう可能性がありますので、何がいいかは難しいところですが。
お年寄りや、人との関わりが好き!
やりがいのある仕事をしたい!
と思える方には本当に楽しい仕事だと思います。
本気でこの資格を取りたいと思う方は、今後のリハビリ業界を引っ張っていくという気持ちで頑張ってください!